またもイイダコ飼育かな

先日，新聞を眺めているとよく行く漁港での釣果が載っていた．御船町に住む農業の主婦が，4時間で350パイのイカを釣り上げたというものであった．新聞では，コウイカと書いてあったが，あの波止でコウイカを釣るのは至難の業だから，きっとシリヤケイカだろうと想像はできた．シリヤケイカは，見た目が悪いのと大量に取れるのでとても安く手に入るイカだ．しかし，期間限定の食材だから，時期を逃すと拝めなくなる．味は，刺身よし，バター炒めよし，てんぷらよしの問題ないイカである．鮮度の問題で，過小評価されているに違いがない．
　何年か前に，一匹100円だったから，20匹ぐらい買って冷凍しておこうかと思い行きつけの卸鮮魚店に出向いた．そこでは，その日の朝あがった鮮魚をおばさんが仕分けしている最中だった．
　今回の買い物は，白えび，あしあか，シリヤケイカだった．急がしそうにしているおばさんに，これらの入荷状況を聞くと，海が薙いで不漁だったと告げられた．シリヤケイカを聞くと，”ちょっとならあるよ”ということで，14匹入ったビニール袋を大型冷蔵庫から出してもらった．いくらですか？と聞くと200円と400円だから600円ですと言われた．じゃ買います．といって全部購入した．
　新聞では，シリヤケイカが豊漁と書いてあったことを告げる．そうするとおばさんは，あ～～～，確かにここのところ釣り人が凄い．店から見える堤防の上には大勢の人が並んで，まるでネオン街ですよといっていた．この狭い堤防にあれだけ人が来ると，最初に車を止めた人は出れないのではないかと心配していた．きっと真夜中，100人以上の人が狭い堤防にひしめき合って，えぎにきびなごをつけて釣っていると思われる．新聞の威力は凄いものだ．しかし，穴場だから釣れただけで，コンスタントに釣れるはずもなく，寒い夜に粘っても，10匹も行かないであろう（もしかしたらぼーずもいるかもしれない）．買ったほうが早いのでは？とおばさんは締めくくった．実際僕も同感だから，こうして買いに来ているわけだが．
　いつも商品のえびが入れてある大きな水槽に目をやると，白えびの生きたものが泳いでいた．おばさんに”これは売り物ですか？”とたずねたら．選別していないから高いよ．と言われた．時間が経って死んだものは，800円／1ｋｇなのだが，生きたものは2000円／1kgするよ．例年だと生きでも1200円／1kg　だから，確かに高い．でも，1年ぶりだし，型もいいので1kg購入することにした．それを見ていた近所のおばあさん（おそらく年金生活者）が，”わしもえびを買いたいといったが”，店のおばさんは，これは高いからやめたほうがいいよと説得していた．
　そうこうしていると，軽トラックが店の前に止まって，トロ箱をひと箱おいていった．見ると山盛りにされた黒い物体が置いてあった．もしかして，イカ？予想通りであった．新しい商品（魚・イカ）が入荷してきたので，もう一度おばさんに，
”このイカは売り物？”とたずねた．
”そうだよ”．
いくらですか？
400円／1kgだね．
じゃ2kgお願いします．
おばさんは，ビニール袋に10匹いれ，1kgを大きく超えていたがこれでいいやとばかりに，10匹入りを2袋作ってくれた．あわせて，4袋を200円＋400円＋400円＋400円の1400円をイカ代として支払った．家に帰って裁いたら，34匹入っており，全部で4kg以上あった．サイズに大小はあるが，一匹42円程度である．やっぱ，買ったほうがいいと思うがな．．．．
　ふとトロ箱の脇に目をやると選別された雑魚（売り物にならない魚たち）に混じってイイダコが2匹いた．指でつついてみるとまだ生きている事が確かめられた．さらに胴体には，なにやら多めの内臓が入っている．．．．．
これは！！産卵するぞ！！！きっと．
すかさず，おばさんに”このイイダコはいくらですか？”
とたずねた．
すると意外にも，あげるよと即答された．じゃーお言葉に甘えて．
一匹だけかと思ったら2匹ともくれた．
つりで使うこませようの蓋つきバケツを持ってきて，海水を入れ，
”これに入れてください”といった．
”どぎゃんすっと？！”といわれた．
”生きたまま連れ帰って，飼うのですよ”と平然と答えた．
一瞬，あっけにとられたおばさんであったが，少しして笑い始めた．
てっきり煮付けにするとでも思っていたのだろう．
イイダコは，煮ると小さくなるので，2匹ばかりでは売り物にならない．大体は10匹単位で売っている．もらったイイダコは，結構大きく，手を広げると30ｃｍをゆうに越していた．生きてるとはいえ，何時間もザルに乗っていたイイダコだから，瀕死の状態かもしれない．二匹をバケツに移すと，一匹は墨を吐いてバケツにへばりついた．何時間か陸上にいたから弱っているだろうが，ひとまず家に持ち帰ってから考えることにした．
車に乗って，ふと気がついた．
”あ！！！水槽がない！！”
現在稼働中の二つの水槽には，ウナギ45cmとサンゴ礁にすむシャコ数匹が陣取っていた．
”ウナギをにがそうかな～～～～～～”
　　　　　　　つづく